俳句の可能性
太郎とは 男のよき名 柏餅
長谷川櫂
この俳句を初めて聞いた時は驚きました。それまでは俳句といえば、正岡子規の「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」や松尾芭蕉の「古池や 蛙飛びこむ 水の音」に代表されるように「『さび』という美意識をあらわすもの」という印象がありましたが、「太郎とは 男のよき名 柏餅 」はそれとは違う力強さを感じました。
「太郎とは 男のよき名 柏餅 」を野村 克也風に喩えるなら、「リーグ優勝のかかった試合で、先発のエースが、味方が1点差でリードしている9回裏に抑えとして登板し、渾身の力でストレートの速球を投げ、キャッチャーがそれを受け止めた時のような句」といった感じです。
長島 茂雄風に喩えるなら「ピッチャーがスパーンと投げて、キャッチャーがバシーンと取った時のような句」といった感じです。