公憤  〈上〉

 
 主は正義をもって世界をさばき、
 公平をもってもろもろの民をさばかれます。
 主はしえたげられるもののとりで、
 なやみのときのとりでです。
 み名を知る者はあなたに寄り頼みます。
 主よ、あなたを尋ね求める者を
 あなたは捨てられたことがないからです。

 『聖書』 詩篇 第九篇 8−10 口語訳 日本聖書協会


 現在、中東で多量に流されている血と涙は日本と無関係ではありません。日本は貴重な天然資源である石油の多くを中東から購入し、使わせていただいています。そのおかげで、日本人は電気、ガソリン、合成樹脂など生活必需品を使うことができます。

 では中東の和平の為に日本人が何ができるのか?と考えたとき、その答えの一つが、日米安全保障条約の破棄があげられます。

 アメリカは世界を何度も破滅させるほどの大量の核兵器保有しているのにも関わらず、イランに対しては核開発を非難し、経済制裁を行い、武力行使も辞さない構えです。そこにアメリカの正義はあっても、世界の正義はありません。オバマ大統領は核兵器のない世界を目指していますが、今年大統領に再選されたとしても、4年後は違う人が大統領になります。その人が核廃絶を目指すかどうかは分りません。

 アメリカにはチャレンジ精神、民主主義、自由を尊ぶ精神など学べるものがたくさんあります。しかし、現在のアメリカは紛争の解決を公平、正義に基づくのではなく、アメリカの国益にかなうかどうかで判断し、紛争を解決しようとしています。シリアに対しては武力介入も辞さない構えですが、同盟国であるイスラエルに対しては、程度の差はあれ、シリア政府と同じようなことをしているのに黙認しています。日本がアメリカと日米安全保障条約を結んでいるということは、日本はそれらのアメリカの姿勢を支持しているということです。

 日本は核廃絶を訴えていますが、アメリカと軍事同盟を結び核の傘の下いる現状では、その訴えは核保有国の国民の心に響きません。

 沖縄の米軍基地のすぐ近くの密集する民家では、そのすぐ上を轟音をたてながら、軍用機が飛び交います。これからも日米安全保障条約を支持する日本人で沖縄以外に住む人たちは、自分達の住む地域に米軍の基地を移転していただきたい。「日米安全保障条約賛成!でも自分達の住む近くに米軍基地が来るのは嫌だ!」と訴えるのは沖縄県民に対するいじめです。沖縄県民の人の善さにつけこむのも、そろそろ止めたほうがよいのではないのでしょうか。見て見ぬふりも立派ないじめだと思います。

「長いものにはまかれろ、力が正義だ、それが現実だ」という日本の大人たちの姿を見て育つ子供たち。子供たちのいじめの問題がそれらと無関係といえるでしょうか?

 日米安全保障条約を破棄すれば沖縄基地問題もあっさり片付きます。

 大国の国益に基づくのではなく、法に基づいて紛争を解決していくには、世界政府(地球連邦)の創設が有効です。現在でも国際司法裁判所国際刑事裁判所はありますが、判決に強制力がありません。世界政府を樹立し平和維持軍を作り、法に強制力を持たせます。主体的に世界政府樹立を訴えるには、世界政府樹立まで日本はどこの国とも軍事同盟は結ばず、中立でいなければなりません。「世界政府樹立は理想論だ、非現実的だ」という人もいらっしゃるでしょうが、理想論だからという理由で、現状に甘んじる姿勢を幕末の日本人が持っていたら、今でも日本の最高権力者は「将軍」であるかもしれません。

 日本は尖閣諸島竹島北方四島など周辺諸国との間に領土問題を抱えており、アメリカという後ろ盾が無くなった時のことを考えると、不安はぬぐえないかもしれません。しかし、人間には不安をぬぐえるもの、つまり「勇気」があります。日本人は日本国民をはじめ世界中の人たちの為にも、今こそ勇気を出す時だと思います。力が支配する世界から法が支配する世界へ。その流れを作る力が日本人にはあると思います。世界中の人々が共に栄え、平和に暮らすためにも、読者のみなさんにはご一考いただきたい。

 昨年5月のギリシャに端を発した、ユーロ圏の信用不安ですが、この不安は払拭しつつあります。信用不安のおかげで、ユーロ安になり輸出産業は潤いました。信用不安後、ユーロの首脳方の暗い表情をニュースでよくお見かけしました。欧州金融安定化基金の合計融資能力拡大、財政の健全化やお金の流れの透明化は重要ですが、首脳方がニッコリ微笑んで、「ユーロ安の今こそヨーロッパを楽しむチャンスです!ぜひ、おこしいただいて、ヨーロッパの歴史と風を感じてください」的なことを述べていたら、それも不安払しょくに役立っていたと思います。魅力的で豊富な観光資源があるのですから。第二次世界大戦後のヨーロッパの人々が歩んできた道のりは、紛争を暴力で解決するよりも、紛争を平和的に解決していくことで、みんなが豊かになれることを証明しています。

 僕はアメリカが嫌いだから、日米安全保障条約の破棄を訴えているのではありません。何でもかんでも相手のいうことを聞くのが本当の友人ではありません。それに世界政府樹立にはアメリカの存在は不可欠です。アフガニスタンで治安維持活動に従事し、お亡くなりになった方々の死を無駄にしないためにも、僕は日米安全保障条約の破棄を訴えたいのです。

 アメリカの2011年度の軍事費は7,246億ドルです。国民一人当たりに換算(約3億人の国民として計算)すると約2415ドルです。赤ちゃんから高齢者まで、一人年間約2415ドルです。貧しい国に住む国民の一人当たりの年収より多い額です。

 いくらアメリカが世界一豊かな国でも、戦線が拡大すれば、戦費は増大し国が立ち行かなくなります。世界各国が合意し世界政府を創設し、軍事費を減らし、核兵器をなくし、平和維持活動は世界各国が国力に応じて公平に分担するのが、アメリカにとって最高の国益になると考えられます。軍事費を減らした分を財政赤字の軽減、治安維持、失業者対策、健康保険制度、高齢者が安心して暮らせること、再生可能エネルギーの適正利用の開発などにまわせます。誰も核兵器を持たなくなった世界で、核兵器を持とうとする者が現れて、その者に「核兵器をつくるな」ということは正義です。

 僕は自由の女神が掲げるたいまつの明かりが、再び世界中を照らすことを願ってやみません。