小さい春

 雨つぶの中にも春が宿りけり

         近藤康紀

 これは2013年2月25日の読売新聞の「読売俳壇」の正木ゆう子選の俳句です。

 春と言えば、暖かい日差しやつぼみの膨らみなどから春を感じるものです。しかし雨つぶの中に春を感じるところに、作者独特の視点があります。

 この句では雨粒の中の春を詠んでいますが、雨粒が出来る課程、つまり海や川などにある水分が太陽の熱によって水蒸気になり、それが雨粒になることを考えると、「雨粒の中にも宇宙が宿りけり」ともいえます。雨つぶは大いなる循環の小さな一部です。「雨つぶの中にも春が宿りけり」はそんなことも連想させてくれる、春らしい高揚感と広がりのある、佳い句です。