「ただ」

 僕の父が亡くなった時、僕はそれほどショックではありませんでした。父が亡くなる数年前から、父が何時亡くなってもおかしくないと思っていたので、心の準備をしていたからです。準備をしてはいましたが亡くなってからは、いろいろな思い出が去来し、様々な感情を経験しました。ですがそれほどショックではありませんでした。

 今年の日本は災害が多いです。災害で命を落とされた方もいらっしゃいます。ニュース映像で愛する人を失い悲嘆する方々が映し出されているのを何度も見ました。愛する人との、突然の死別のショックの大きさと深い悲しみは、体験した方でないと分からないと思います。今の僕にはおかけする言葉がございません。ただ、悲嘆にくれる方々と親しい方々は、かける言葉がなくとも、ただそっとそばにいる。ただそっと背中をさする。ただそっと手を握る。ただ一緒に涙する。それらの「ただ」が悲嘆にくれる方々の慰めになるはずです。

※2018年9月18日に加筆修正